南大阪動物医療センターコラム

2010年10月 4日 月曜日

ワクチネーションと社会化

 犬の予防注射には狂犬病だけでなく、いわゆる混合ワクチンがあります。2種~9種の伝染病を同時に予防するワクチンが現在利用可能となっていますが、何種のワクチンを選択すべきかは、環境や地域性、獣医師の考え方によって異なる場合があります。これを子犬には生後18週頃までの間に3回接種し、以後毎年1回の追加接種をするのが一般的です。

 子犬に3度の接種が必要な理由は、移行抗体(親譲りの免疫)の存在下ではワクチンによる免疫が成立しないことによります。それぞれの伝染病に対する移行抗体は生後6週から18週までの間にバラバラに失われて行きます。すべての移行抗体が消失するのを待って接種を行えばよいようなものですが、その間早々に移行抗体の無くなった伝染病に感染してしまっては意味がありません。4週間程度の間隔で3度の接種が最も合理的なのです。

 そこで「いつになれば安心なのですか」「それまで外に出してはいけないんでしょ」という質問をよく受けます。3度目の接種の後さらに2週間程で免疫は完成します。しかしこの時期は犬にとって大切な社会化の時期でもあります。より多くの人や自分以外の動物に接し、自分を取り巻く社会を学ぶこの時期は、人格ならぬ犬格形成に大きな影響を与え、生涯にわたり犬の行動を左右します。確かに伝染病の感染は避けねばなりませんが、外に一歩も出ない箱入り娘の臆病で攻撃的な性格は、誰からも愛されるものではありません。安全な社会化の手段としてパピークラスは理想的です。それが無理でも、抱っこ散歩やご近所の井戸端会議へ連れて行くなど工夫次第です。感染のリスクを多少冒してでも社会化させることはとても重要なのです。こんな説明をさせていただくと、たいてい良く分かりましたと飼主さんから返事が返ってきます。そして「それでいつから外に出してもよいのですか?」と尋ねられます。誰しも自己責任の無いマニュアルが欲しいのですね。

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2010年10月 4日 月曜日

狂犬病予防接種

 4月になると全国のほとんどの市町村では狂犬病の予防集合注射が行われます。これは狂犬病予防法に基づく行政サービスの一環です。生後90日を越えた犬は1か月以内に市町村への登録が必要で、毎年の狂犬病予防接種が義務付けられています。

 昨年2名の日本人が海外での受傷により帰国後狂犬病を発症の報道は記憶に新しく、犬での発生ではなかったことに胸をなでおろした関係者も少なくなかったに違いありません。

 狂犬病はほとんどの温血動物に垣根なく感染し致死的な恐ろしい病気です。全世界で発生の無い清浄国は日本、オーストラリア、スウェーデンなどごく限られた国で、今現在も多くの国で猛威を振るい、日本への再侵入を虎視眈々と狙っています。

 日本が清浄国になることができた大きな要因は四方を海に囲まれた地の利と予防接種の徹底にありました。しかし、昭和32年以降発生がないことからそのたがが緩み、飼育頭数の増加と相まって未接種犬が増え続けています。狂犬病の犬が日本国内へ侵入した場合、その地域の接種率が80%を超えていないと拡散を防げないといわれており、事は既に憂慮すべき状況に至っています。

国内に狂犬病の犬が侵入したとしましょう。発症した犬は凶暴化し次々と人や他の動物を咬み、感染を拡大します。報告を受けたパトカーや救急車が行き交う中、発生を認めた都道府県知事は直ちにそれを公示し、狂犬病予防法に基づき交通網が遮断され、半径5kmにいる犬には口輪と繋留の命令が出され移動の制限がかかります。全国から狂犬病ワクチンが集められ当該地域の未接種犬に予防員が接種をして回ります。他の地域でのワクチンは枯渇し、ワクチンを求めてパニックになる人、犬を見てパニックになる人、日本中が混乱の渦に巻き込まれていきます。こんな話が仮想の世界で終わるように、愛犬家たるもの狂犬病予防接種の義務は果たしたいものです。

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2010年10月 4日 月曜日

動物と共に暮らす

家庭で飼われている動物たちの診療が本格化したのは昭和50年頃からです。そこには、経済の高度成長や核家族化があり、犬や猫たちを一つ屋根の下で暮らす家族の一員として迎える人が増えたという変化がありました。彼らと共に暮らすことで、人も動物もより健康で幸福な生活を送れることに気づいたのです。

 そこで大切になってくるのが、動物たちを理解するということ。たとえば初めて子犬を家庭に迎えたときのことを考えてみましょう。サークルや寝床、食器やフードもそろえました。もちろんトイレも。子犬は嬉しそうに部屋を歩き回り、それを抱きしめる家族の顔には笑みがこぼれます。ふと目をとめると何かを探しているようなそぶり。あれっと思った瞬間、部屋の真ん中でオシッコ。大変とばかりに騒ぎ立てる子供たち。オシッコに鼻先を押し付けて叱るのがよいと聞いたことがあるぞとお父さん。これはどちらもしてはいけないことなのです。排尿という自然な行為に何の疑問も抱いていない子犬が、大騒ぎをされることで驚き、叱られることで怖がります。結果、オシッコ自体が悪いこと、家族に隠れて済ますものと考えるようになります。決してトイレ以外でしたから叱られたのだと複雑には考えません。子犬には堂々とオシッコする場所を探してもらい、そしてトイレへと誘導してあげてください。成功すれば、思い切り褒めます。排尿の快感と褒めてもらえる嬉しさで、だんだんトイレでオシッコすれば良いのだと分かってきます。失敗したときに叱るのはタブーなのです。「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ。」山本五十六が好んで引用し人材育成の金言となっているこの言葉、そのままトイレのしつけにも当てはまるのですね

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