南大阪動物医療センターコラム

2012年7月24日 火曜日

幸福をもたらす中性化

  ニュータードという言葉をご存じでしょうか。これは、中性化した動物のこと。つまりメスであれば卵巣と子宮を摘出し、オスであれば睾丸を摘出した動物を指します。

 一つ屋根の下で暮らす動物たちの存在無しに自分の生活を語れないという人は多いでしょう。その結びつきを強く感じる人ほど、家族なのだからと、インタクト(未手術であること)への強い執着が見られます。果たして、それは動物たちにとって、本当に幸福なことでしょうか。

 中性化手術(不妊・去勢手術)は決して、子供を産ませないことだけを目的にした手術ではありません。インタクトの動物に発情の時期が訪れると、家族など目に入らず、異性が気になり、外へ出たい衝動に駆られ、食事どころではなくなります。この時期は、家族との関係と、自分の内なる本能との板挟みに我慢を強いられるのです。

 一方、家族からすれば、食欲が落ちて心配したり、生理ショーツをはかせたり、メスの猫であれば夜を徹しての求愛の歌に悩まされたりと、心労が絶えません。ニュータードなら発情はなく、人と動物の関係が危うくなるこんな時期を過ごす必要はありません。

 されに卵巣・子宮・精巣・前立腺の病気、乳がんなど、ニュータードなら、かからないで済む病気が山のようにあり、明らかにインタクトより寿命が長いのです。中性化手術は決して人間の利便や勝手の押し付けではありません。家族との良好な関係を保ち、幸福な毎日を過ごすことこそ動物たちの望みです。

 彼らにとって憂うつな発情から出産へと続く道のりは、命の消耗であっても生きがいとはなりません。彼らの寿命は人の寿命よりはるかに短く、共に過ごせる時間を少しでも長くと家族が考えるのはごく自然です。中性化は繁殖能力を神様にお返しすることで、さらに何年かの寿命を授かるのだと考えることができるのです。


 

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