南大阪動物医療センターコラム

2012年11月27日 火曜日

分かりにくい犬・猫の「せき」

 犬や猫のせきを聞いたことがありますか?犬も猫もくしゃみは人とよく似て「くしゅん」というあれです。ところが、せきは初めて聞いた飼い主は、すぐにはせきと分からないことも珍しくありません。犬の場合は、のどに何か引っかかったような感じで「カッ、カッ」と大きく口を開けて苦しそうにします。猫の場合は「ヒーッ、ヒーッ」と絞り出すような感じです。いずれもそれが犬と猫のせきなのです。

 せきにはさまざまな原因があります。犬ではケンネルコフなどの感染症、気管虚脱や気管支炎、肺炎、フィラリア症、僧帽弁逆流症のような心不全などが主な原因となります。猫では伝染性鼻気管炎などの感染症、気管支炎や肺炎などが挙げられます。

 いずれの疾患も原因の治療が大切なことは言うまでもありませんが、乾燥した空気、パンティング(あえいだ呼吸)するほどの室温、空気の汚れなど、気道の刺激が強いほど、せきが悪化することは共通しています。

 これらの疾患の中で環境とのかかわりが深いものに、いわゆる「猫のぜんそく」があります。ぜんそくとは感染症や心不全、腫瘍などのはっきりとした原因が分からない慢性気管支炎を指します。

 原因は有害刺激に対する一種の過敏症と言えます。猫のぜんそくは決して珍しくなく、100匹に1匹くらいの割合で発生し、中でもシャム猫での発生率は他の猫の5倍に達すると報告されています。

 症状の軽い初期には、忘れたころに「ヒーッ、ヒーッ」とせきをするくらいで見過ごされがちですが、この初期に空気清浄機を導入したり、家族の喫煙を制限すれば症状がなくなり、事なきを得る場合も少なくありません。

 重症でも刺激の原因を取り除くのが治療の最優先課題ですが、最近は人と同様にプロピオン酸フルチカゾン吸入剤による吸入療法が利用可能となっています。


 

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2012年11月 9日 金曜日

定期的に飲ませたい駆虫薬

  寄生虫という言葉にどんな印象をお持ちでしょうか。寄生虫でアトピーが治るとか、寄生虫ダイエットといった昨今の風潮には行き過ぎを感じてしまいますが、これは人に寄生する虫が人に寄生した場合の話です。

 犬猫の寄生虫が人に寄生した場合(異種寄生と言います)や、人が寄生虫の最終的な寄生先ではなく中間宿主となるような場合には、単に消化器系の症状や栄養学的な問題にとどまらず、大きな障害を引き起こし、命を脅かす場合も少なくありません。

 以前、人の犬(もしくは猫)回虫症が社会問題になったことがあります。公園などの砂場が犬や猫の排せつによって寄生虫の卵に汚染され、子供たちが砂を口にして感染すると考えられていました。しかし現在では、その大半が感染した飼育動物の排せつする卵が被毛に付着し、スキンシップで人の口に入る可能性が高いと指摘されています。

 さらに悪いことに異種寄生の場合、回虫は本来のように成虫にはなれずに幼虫のまま体内をさまよい、肝臓や肺、脳、眼球に入り込んで肝障害やせき、けいれん、失明などの重大な症状を引き起こします。

 寄生虫の一つ、エキノコックスは犬やキツネが終宿主の寄生虫で、人は中間宿主です。感染した動物の排せつする卵が誤って人の口に入ると幼虫となって何年もかけて人の肝臓内で増殖し破壊を続けます。このような動物の寄生虫で厄介なのは、動物に感染してもほとんど症状がなく、人に感染した場合に重症となり、有効な治療法がないことなのです。

 回虫卵の検便での検出率は50~70%といわれており、エキノコックスは普通の検査では検出できません。そこで、最近では犬猫に定期的に駆虫薬を飲ませることが推奨されています。

 終宿主に寄生する寄生虫は、駆虫薬でいとも簡単に駆除されてしまいます。元来、おなかに持っていても良い寄生虫などいるわけがありませんものね。


 

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