南大阪動物医療センターコラム

2013年5月28日 火曜日

せきは心臓の病気を疑え

  せきを主な症状とする病気はいくつかあります。その中でも、中年期以降の小型犬に多くみられる「僧帽弁逆流症」は代表的な病気の一つです。

 この病気の原因は心臓の四つの部屋のうち、左心房と左心室の間にある僧帽弁と呼ばれる弁膜が変性を起こしてイボイボになってしまうことによります。

 弁膜の仕事は血流を一方通行に保つことにあるのですが、イボのせいで閉じたときにすき間ができ、そのすき間から逆流してしまうのです。逆流によって血液の流れが悪くなり、左心房が大きく拡張し、さらには肺全体がうっ血することになります。

 この左心房の拡張によって気管支が持ち上げられたり、肺全体がうっ血することによって、運動後や夜中にせきが出ることになります。症状が進むと、少しの運動でも呼吸が荒くなったり、疲れやすくなってきます。そして、最終的には呼吸困難が現れます。

 この病気はゆっくり進行し、左心房へ逆流を生じ始めてもすぐには症状が出ません。心臓はいつも以上に頑張ることで、逆流して不足した分に見合うだけの量を余分に送り出そうとします。つまり、安静にしていても全力疾走しているときのように仕事をすることによって、体の要求に応えようとするのです。そして、それが限界を迎えたときに重い症状が出ることになります。

 この病気の根源的な治療は弁膜を取り換えることですが、実際的ではありません。しかし、幸いなことに、ACE阻害薬などの優れた薬剤によって心臓の負荷を大きく軽減することが可能です。その結果、心臓の頑張りを最小限に抑え、限界を迎える時期を大幅に延ばすことができるようになりました。

 せきなど軽い症状のときから心臓の負荷を減らすことで、生活の質を落とすことなく数年の延命がかなうことも珍しくはないのです。

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