南大阪動物医療センターコラム

2013年7月29日 月曜日

無意識に覆う第3のまぶた

 犬や猫の目頭の中から白い膜がはみ出てきて眼球にかぶることがあります。この膜を「瞬膜」と言います。上下のまぶたに対して三つ目のまぶたという意味で第3眼瞼と呼ぶこともあります。瞬膜とまぶたの大きな違いは、その動きにあります。まぶたは意識してつむることができますが、瞬膜は動物の意思と無関係に眼球を覆います。

 瞬膜を動かす筋肉はなく、眼球に傷を負うなど強い痛みがあると「眼球後引筋」という眼球を支える筋肉がけいれんを起こし、強く眼球を後ろへ引っ張ります。すると、瞬膜が目頭から滑り出て眼球を覆い保護してくれる仕掛けです。

 この役割以外に瞬膜が出てくることがあります。元々、眼球の後方にはクッションの役目を果たす脂肪(球後部脂肪)があるのですが、慢性の下痢や長期の脱水などでやせてくると、目が落ちくぼみ瞬膜が出っ放しなってしまいます。

 「眼に膜が張った」「眼が三角になった」と、あわてる必要はありません。原因を解決し、栄養状態が改善されれば、瞬膜は目頭の中に収まり元通りになります。

 瞬膜の内側の付け根には、瞬膜腺という組織があります。この瞬膜腺は涙腺のように涙を作り、へんとう腺のように免疫に関連しています。瞬膜腺の作る涙の量は涙全体の30%以上と言われています。時にはへんとう腺のように赤く腫れあがり、目頭の中に収まりきれずに反転して飛び出してくることがあります。

 その様が目頭からサクランボがのぞいているように見え、チェリーアイと呼ばれています。いったん飛び出すと抗生剤などで治療しても腫れを引かせるのが難しく、手術で目頭の中に収める必要があります。

 愛犬・愛猫のまぶたの上から優しく眼球を押さえてみてください。瞬膜が滑り出てくるのが分かります。自分にはない物分かりにくいものですね。

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2013年7月 6日 土曜日

夏の果物はタネに注意

夏の果物といえば、スイカと桃でしょうか。旬の食べ物を口にするのはささやかな幸せでもあります。家庭犬の中にはこれらの果物が大好物で、それをゲットするためなら手段を選ばないつわものもいます。その結果、時にはとんでもないことが持ち上がります。

桃の種、おもちゃの積み木、毛糸の塊、カーテンの一部、ハムに巻いてあるひも、針のついた縫い糸、焼き鳥のくし、石ころ、硬貨などなど。これらは、実際に犬や猫の消化管から取り出した異物なのです。消化管の中にあった期間はまちまちで、少なくとも半年以上というものから、さっき飲み込みましたというものまで、千差万別です。

嘔吐などの症状が激しくて受診し、レントゲンで写るものは分かりやすいのですが、レントゲンが透過してしまうような異物で、飼い主も飲み込んだことに気付いていない場合には、診断に手間取ることもしばしばあります。

桃の種などは厄介な異物の代表で、大抵は胃の内にとどまっています。症状は時々嘔吐がみられる程度で、家族が桃を食べたことをすっかり忘れたころに嘔吐がひどくなったような場合には、問診で何の手がかりもなく、レントゲンでも診断が非常に微妙で、かすかに輪郭が確認できれば良い方です。

バリウム検査に進むか、内視鏡を選ぶか苦慮するところでもあります。それは人と違い内視鏡の検査に全身麻酔を必要とするからですが、安易にバリウム検査へと進むと、それで異物とはっきりさせることができたとしても、内視鏡での摘出や胃の切開をするのにバリウムが障害となります。

動物が飲み込んだ異物の診断は意外と難しいものです。「種飲んでしもた」と動物がしゃべってくれれば、誰も悩まずに済むことも、言葉を話すことのできない動物と向き合う獣医師の宿命と言えるでしょう。桃の季節は桃の種の季節でもあるのです。

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