南大阪動物医療センターコラム

2013年10月31日 木曜日

腫瘍の発生率高い停留睾丸

 人でも動物でも赤ちゃんは本当にかわいいものです。犬や猫の場合、赤ちゃんがお腹の中にいる期間、つまり妊娠期間は普通9週間です。赤ちゃんの目は生まれたばかりはまだ開かず、10~14日たつと、まぶたが分かれて開くようになります。同じように、雄の胎児の睾丸も妊娠期間中はまだおなかの中にとどまっているのですが、生まれてくると間もなく、鼠径管と呼ばれるまたの付け根にあるおなかの開口部を通り抜けて陰嚢の中に降りてくるのです。

 しかし生後5~6ヶ月たっても睾丸の下降が完了しないことがあります。そうなってしまうと、それ以降は下降を期待できません。睾丸がうまく下降できないことを停留睾丸と呼び、小型犬やトイ犬種によく見られます。片方だけが下降しないこともあれば両側のこともあります。通常、両側ともの場合は不妊となり、片側だけならば生殖能力はあります。

 停留する部位は、おなかの中から陰嚢の手前までと幅があり、部位によっては腹腔内陰睾、鼠径陰睾などと呼ばれます。

 停留睾丸でもそうでなくても、繁殖する予定がないのならば去勢手術が推奨されるのは以前に本欄でお伝えしたとおりです。仮に繁殖の予定があるとしても停留睾丸が遺伝性であることや、下降した睾丸と比べて睾丸腫瘍の発生率が14倍にもなることから手術の必要性はより高いと言えます。

 犬の睾丸腫瘍はセルトリ細胞種、間質細胞種、精上皮腫の3種類あり、全体の40%を間質細胞腫が占めます。間質細胞腫を除いた残る二つの腫瘍には5~10%の転移報告があります。

 鼠径陰睾は通常の去勢手術とほぼ同様の手順で手術できますが、腹腔内陰睾は開腹の必要があります。

手術を急ぐ必要はありませんが56歳のがん年齢になるまでには去勢手術をすませたいものです。なぜなら睾丸の腫瘍の半分以上は触診で発見するのが不可能だからです。

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2013年10月 3日 木曜日

かゆみの原因 皮膚への寄生虫

 寄生虫というと消化管に寄生する回虫や心臓に寄生するフィラリアなどの内部寄生虫を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、皮膚に寄生する外部寄生虫もいます。ノミはその代表ですが、それ以外にもダニの仲間の疥癬虫や毛包虫が動物たちを悩ませることもあります。

 疥癬虫にはヒト疥癬、イヌ疥癬、ネコ疥癬などの種類があり、それぞれの宿主にすみ着きます。違った動物種を間違えてかむことはあっても、そこにすみ着くことはできません。ちなみに、ヒト疥癬はナポレオンの戦意を喪失させた真犯人として有名です。

 疥癬虫も毛包虫も全身に脱毛やカサブタ、タダレを作りますが、疥癬虫のほうがかゆみは激しく、寄生動物から疥癬虫を移されることによって健康な動物も発症します。

 毛包虫はニキビダニとも呼ばれ、毛穴に寄生するダニの仲間です。すべての哺乳類にはそれぞれに分化したニキビダニが寄生し、寄生率は100%ともいわれます。ですからほとんどすべての健康な動物にすでに寄生していて、健康な皮膚からも検出されるのが普通です。ステロイドの投与や免疫の低下などによって異常な増殖を起こし、発症に至ります。

 共にダニの仲間ですので、全身に広がった場合はイベルメクチン製剤などの全身投与が効果的です。ただし、この製剤はMDR1遺伝子という解毒機構に異常がある場合は使用できませんので、使用前に異常の有無をチェックする必要があります。軽症ならばアミトラズ製剤などの外用薬も効果的で、シャンプー療法と組み合わせると良いでしょう。

 疥癬虫は皮膚の角質層にトンネルを掘り、そこで卵を産むため根治に時間がかかりますし、毛包虫は免疫を低下させた基礎疾患の管理なくして根治はあり得ません。共に多少の改善があっても油断せずに治療を続けることが大切です。人も動物もかゆみほど耐え難いものはないですものね。

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